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コラム

連載快楽亭ブラック
「青春の殺人者」 (せいしゅんのさつじんしゃ)  監督:長谷川和彦 出演:水谷豊 1976年 掲載日2000年10月15日
 先日、東京浅草で長谷川和彦監督作品「太陽を盗んだ男」が上映されていたので、久しぶりに見に行ってきた。
“天皇に会いたい”
という理由でバスジャックする初老の男、演じるのは伊藤雄之助だ。そのバスでふたりの男が運命的に出会う。方や、生徒とともに乗っていた中学教師、沢田研二。もう一方は、バスジャック犯を捕らえた警部・菅原文太だ。後に、中学教師が原子力発電所から盗んだプルトニウムで原爆を作り国家に挑戦する。中学教師を逮捕しようとする警部との宿命の対決。壮大なスケールで描く娯楽アクション大作は、公開から21年経った今見ても、まるで古さを感じさせなかった。このチャンネルでの放送も、また見ようっと。
 前置きが長くなったけど、今回紹介する「青春の殺人者」は、「太陽を盗んだ男」の3年前に公開された、長谷川和彦の衝撃的な監督デビュー作だ。実際におきた両親殺人事件を題材にした中上健次の短編小説「蛇淫」をベースに、衝動的に両親を殺害してしまった若者を描いて、毎日映画コンクール日本映画優秀賞などその年の各映画賞を独占した。
 親殺し、子殺しがニュースにならないほど頻発する世紀末にこそ改めて見直したい作品だ。長谷川和彦が描写した両親殺害にいたる若者の深層心理は、現在のわれわれの心にどう響くのだろうか。偉そうに教育問題を論じる評論家連中にも是非見て欲しい。
 長谷川和彦は、70年代に前述の2作品を制作したあと沈黙を守り続けているのだが、2作品とも30年近く前に、日本の世紀末の若者心理を予言していたともいえるほど、鋭い先見性を持った監督なのだ。21世紀にこそ、そんな彼の新作が見たい。これはあっしだけの希望ではないはず、その証拠に長谷川和彦を応援するホームページは本人も巻き込んで盛り上がっているし、スポーツ新聞でもインタビューが掲載されていた。
ついでに、今回の「長谷川和彦オールナイト」で興味を持った人に、あっしからオススメの1本を紹介しよう。長谷川和彦が脚本で参加した「濡れた荒野を走れ」がそれ。地方都市の警察がそのまんま犯罪組織だった、という大胆な発想の日活ロマンポルノの傑作だ。「長谷川和彦オールナイト・パート2」で放送することになったら、必見なのだ! ( 書き下ろし )

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