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コラム

連載快楽亭ブラック
「成瀬巳喜男」 (なるせみきお)  掲載日2001年09月07日
 今月の目玉は名匠、成瀬巳喜男のテレビ初放送、ビデオ未発売の珍しい作品を8本まとめて放映する“24時間まるごと成瀬巳喜男”だ。庶民の哀歓、特に女を描かせたら日本一の成瀬巳喜男だが、あっし的には代表作と呼ばれる「浮雲」や「乱れる」それに「めし」「夫婦」「妻」の夫婦三部作より、肩の力を抜いて撮ったコメディ・タッチの作品の方が面白い。去年、ニュープリントで公開された戦前の、ドサ廻り一座の馬の足役者を主人公にした作品(題名が出てこないのは歳のせいかしら)のほのぼのとしたタッチは捨て難いし、「おかあさん」で、パン屋の息子の岡田英次が憧れの香川京子とのデートで、自ら考案して焼いたグロテスクな形をしたピカソパンのギャグはおかしかった。きっと会社が喜劇の演出を依頼すれば、世界的なコメディ監督になったろうにと思うと残念な気がする。
 今日の作品の中では、戦時中に明るく生きる一家を描いた「愉しき哉人生」が楽しみだ。
 柳家金語楼、横山エンタツ、渡辺篤にまだ子供だった中村メイコの豪華喜劇人と成瀬の組み合わせ、面白くない筈がない。戦意高揚にならぬ愚劣な映画と当局ににらまれたというエピソードも成瀬の反骨を示してうれしい。 ( 書き下ろし )

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