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コラム

連載快楽亭ブラック
「芝居道」 (しばいどう)  監督:成瀬巳喜男 出演:長谷川一夫/山田五十鈴/古川緑波/花井蘭子 ほか 1944年 掲載日2003年07月11日
 6月28日、池袋の新文芸坐で成瀬巳喜男監督特集が幕を開け、初日のゲストとして宝田明がトークショーをした。その日上映された「放浪記」で宝田明は主人公、高峰秀子扮する林芙美子の夫を演じていた。妻の林芙美子が流行作家になっていくのに、同じ作家でも自分は売れないので嫉妬のこもった目で妻を見る。ただそれだけで一言のセリフもないシーンでの宝田の演技に何十回もNGが出て、とうとうその日の撮影は中止になった。翌日も朝から同じシーンだが、やはり何十回やってもOKが出ない。困った宝田は高峰に「先輩、どこがいけないんでしょうか?」と聞いたら「わかってるけどもったいないから教えてあげない」と言われた。なんて意地の悪い女だと腹を立てて次の撮影に挑んだら、今度はOKとなった。名匠と名優たちによる、ちょっといい話だ。
 成瀬監督の指導は「やりすぎないで、自然にね」だったという。戦前の成瀬監督は芸道ものが多かった。「鶴八鶴次郎」や「歌行燈」がその代表だが、今日放送される「芝居道」も素晴らしい。明治時代、歌舞伎が古典だけでなく時局に合わせて日清戦争を歌舞伎にして舞台に掛けているのが面白い。 ( 書き下ろし )

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