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コラム

連載快楽亭ブラック
「父ちゃんのポーが聞える」 (とうちゃんのぽーがきこえる)  監督:石田勝心 出演:小林桂樹/吉沢京子/藤岡琢也/司葉子 他 1971年 掲載日2003年08月29日
 ポー、ポッポー
 汽笛がこだまする、空に小さく消えてゆく
 朝5時50分ちょうど。父だ!父の乗っている汽車が、診療所の下を通っているのだ。
 ポー、ポッポー
 のり子も胸の中で小さく、声にならない汽笛をあげる。

 32年前に見た映画なのに、この映画のヒロイン、ハンチントン舞踊病に冒された少女のり子の詩「父ちゃんのポーが聞える」はまだ全部覚えている。薄幸のヒロインを吉沢京子が明るく演じていたのが更に泣けた。
 父親の機関士を演じるのは日本映画界の良心、小林桂樹。熱演だった。
 友人の落語家、桂文福から聞いた話を紹介しよう。かつて西の遊郭として栄えた飛田に一軒の名画座がある。ある時のここの3本立は「昭和残侠伝」と「大蔵ピンク映画」、そして「父ちゃんのポーが聞える」の3本立だった。
 お客さんは日雇い作業者が多く、1本1本に素直に感情移入する。健さんの映画で一緒に主題歌を歌い、大蔵ピンクのファックシーンでマスをかいたその手で「父ちゃんのポーが聞える」でこぼれる涙をぬぐう。この映画を見て泣かない奴は人間じゃあないね。 ( 書き下ろし )

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