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コラム

連載快楽亭ブラック
「母の旅路」 (ははのたびじ)  監督:清水宏 出演:三益愛子/仁木多鶴子/佐野周二/藤間紫 1958年 掲載日2004年05月28日
 文豪・川口松太郎は大映の重役であり、女優・三益愛子の夫でもあった。その松太郎が脇役女優であった愛妻を主役にして会社を儲けさせようと企画したのが「母」もの映画だった。ストーリーはパターン化されていて、三益愛子が他人の娘をわが子のように育てていたのを、ある日突然大金持ちの実の親が迎えにくるか、三益愛子が実の娘の幸せの為に手放すが、事情を知った娘が逢いに来るというようなストーリーで、ともかく観客を泣かせることをメインに作られたシリーズだった。
 生みの母、育ての母、義理の母と三人の母が登場するその名も「母三人」のキャッチ・フレーズは、3倍泣けます!というものだった。今月の「母」もの特集のお勧めは三益愛子がサーカスの花形に扮する「母の旅路」だ。
 「母」もの映画は戦後、日本が平和になった象徴である。戦争中や戦後まもない頃は映画を見て泣かなくても、現実がつらくてたまらなかったのだから。生きる心配、食べる心配がなくなって余裕が出てきたからこそ、映画を見て泣きたい気持ちが出る。日本のお母さんがのんびり暮らせるようになったから、「母」ものが当たったのだ。母ノンキだねって、これを言いたかっただけなんです。ごめんなさい。 ( 書き下ろし )

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