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コラム

連載快楽亭ブラック
「殺陣師段平('50)」 (たてしだんぺい('50))  監督:マキノ雅弘 出演:月形龍之介/山田五十鈴/月丘千秋/市川右太衛門 1950年 掲載日2008年05月02日
沢田正二郎役は、市川右太衛門のベスト1

 黒澤明脚本、マキノ雅弘監督の「殺陣師段平(’50)」はあっしにとって幻の映画だった。もう20年も前のこと、この映画の上映会があると聞いて湘南まで電車とバスを乗り継いで行ったことがある。それがTVで放映されるとは、うれしいような、口惜しいような複雑な気分だ。
歌舞伎より近代的な演劇、新国劇を創ろうと努力する若き演劇人、沢田正二郎と、無学ながら沢田の言うリアリズムの殺陣を工夫する殺陣師、市川段平の愛憎を描く芸道ものだが、この映画を初めて観た時は驚きの連続だった。いつもは重厚な演技で圧倒的な存在感を示す月形龍之介の段平が、なんとも軽いのだ。剛速球投手がスローボールを投げた時のようで、それでいて巧いのにまいった。
 沢田正二郎役の市川右太衛門、はっきり言ってこの人、生涯一旗本退屈男のワンパターンの演技しか出来ないスターだと思っていた。しかしこの映画の右太衛門は凄い。凄過ぎる。段平の殺陣をさんざ利用しながら、新国劇が殺陣に頼らず文芸ものでいく時に段平を無情に切り捨てるインテリの冷酷さを見事に演じているのだ。それでいて劇中劇の「国定忠治」にはスターとしての華がある。市川右太衛門、生涯のベスト1はこの映画の沢正役だろう。
 わがままで甘えん坊の夫、段平を支える女房は山田五十鈴。ちなみにこの女房は、マキノ雅弘の理想の女として描いたという。あっしもいつか、こんな女房を持ってみたい。(バツ2なのにまだ懲りてない)

→「殺陣師段平」放送スケジュール ( 書き下ろし )

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