【2-3月集中特集 東海テレビドキュメンタリー傑作選】

最新作「眠る村」公開を記念し、劇場公開全10作品 地上波放送10作品を2ヶ月に亘り特集放送

東海テレビの劇場公開最新作「眠る村」(2/2より全国順次公開)は、57年前に三重県・奈良県にまたがる葛尾で起きた“名張毒ぶどう酒事件”を扱ったもの。戦後唯一、司法が無罪から逆転死刑判決を下した事件。半世紀以上経った今もなお、多くの謎がある。これまでにも「重い扉~名張毒ぶどう酒事件の45年~」「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」など何度もこの事件に関わる作品を制作してきた。

最新作公開に合わせ、「平成ジレンマ」から「人生フルーツ」までの劇場公開全10作品に加え、地上波のみで放送された10作品を2ヶ月に亘り特集放送。そのすべてが未ソフト化、ネット配信されていない貴重な作品。是非この機会にご覧ください。

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3月放送

ホームレス理事長 -退学球児再生計画-

「ホームレス理事長 -退学球児再生計画-」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月20日
    2014年・映画・カラー 監督:土方宏史

高校をドロップアウトした球児たちに再生のチャンスを与えようと愛知県常滑市でNPO法人「ルーキーズ」を創設した山田豪理事長に密着したドキュメンタリー。
※3月20日放送回は、本編放送後に「眠る村」齊藤潤一監督のインタビューあり。

青空どろぼう

「青空どろぼう」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月20日
    2011年・映画・カラー 監督:阿武野勝彦/鈴木祐司
    出演:ナレーション:宮本信子

日本四大公害の1つ「四日市ぜんそく」。公害防止法の法制化のきっかけとなったその裁判の判決から38年。公害裁判に立ち上がった原告の人々と、公害発生当初から患者たちを写真と文字で記録し続け、原告たちを支え続けた「公害記録人」澤井余志郎を追ったドキュメンタリー。

きずあと 101歳 戦争と平和のレクイエム

「きずあと 101歳 戦争と平和のレクイエム」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月20日
    2016年・TV・カラー 監督:ディレクター:葛西友久
    出演:ナレーター:宮本信子

1945年3月25日、米軍による名古屋空襲で左目を失った杉山千佐子さんは、去年の夏、100歳とは思えぬ迫力で、「戦争は兵隊だけがするんじゃない!」「戦争で被害にあうのは、弱い立場の女性や子供だ」「戦争のない世界にしてほしい!」と叫んでいた。

人生フルーツ

「人生フルーツ」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月21日
    2017年・映画・カラー 監督:伏原健之
    出演:ナレーション:樹木希林

ニュータウンの一角で、自然とともに暮らす老夫婦を映すドキュメンタリー。数々の意欲作を送り出してきた東海テレビ製作ドキュメンタリーの劇場版。90歳の建築家・津端修一さんとその妻・英子さんにカメラを向け、その豊かな老後の暮らしぶりと、60年間連れ添ってきた2人の深い夫婦愛を見つめていく。
※3月21日放送回は、本編放送後に「眠る村」齊藤潤一監督のインタビューあり。

樹木希林の居酒屋ばぁば

「樹木希林の居酒屋ばぁば」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月21日、3月24日
    2018年・TV・カラー 監督:ディレクター:伏原健之
    出演:津端英子/樹木希林 ナレーション:本仮屋ユイカ

2018年9月に東海テレビで放送された再編集版。
女優・樹木希林(74)と主婦・津端英子さん(89)が居酒屋で女子会をする。きっかけは、ドキュメンタリー「人生フルーツ」。

神宮希林

「神宮希林」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月21日
    2018年・映画・カラー 監督:伏原健之
    出演:樹木希林

2018年9月に東海テレビで放送された再編集版。
「あん」「海よりもまだ深く」などさまざまな作品で独特の存在感を放つ女優・樹木希林が70歳を迎えた2013年、人生初のお伊勢参りをすることに。ちょうど20年に一度の式年遷宮の年を迎えた伊勢神宮の参拝とともに、神宮ゆかりの地を訪ねる樹木希林の旅に密着したドキュメンタリー。

じゃがいもコロコロ~災害救助犬への長い旅~

「じゃがいもコロコロ~災害救助犬への長い旅~」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月21日
    2015年・TV・カラー
    出演:ナレーション:天野鎮雄

『じゃがいも』は、災害救助犬になれるか…。番組は4回目の認定試験から始まります。2011年、『じゃがいも』は、福島県飯館村から岐阜県富加町の犬の訓練所に引き取られてきました。東日本大震災の直後、避難所で飼い主たちは犬のことで困っていました。

じゃがいも大使~災害救助犬への奮闘記~

「じゃがいも大使~災害救助犬への奮闘記~」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月21日
    2017年・TV・カラー
    出演:ナレーション:天野鎮雄

災害救助犬の試験に挑む、福島県で生まれた一匹の犬“じゃがいも”。その雄姿を東海テレビのカメラは追い続け、記録していた。“じゃがいも”は震災後、福島県飯舘村で生まれ、岐阜に引き取られてきた犬。

悪い犬

「悪い犬」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月21日、3月25日
    2017年・TV・カラー 監督:ディレクター:藤井章人
    出演:ナレーション:天野鎮雄

2015年5月名古屋市守山区で住宅から逃げ出したドーベルマンが通行人などにかみつき男女4人がけがをした事件が起きた。ドーベルマンは体重50キロの4歳のオスで、動物愛護センターの職員に捕獲され、殺処分の寸前に同市内で犬のしつけ教室を運営している訓練士に引き取られた。

長良川ド根性

「長良川ド根性」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月25日
    ※2月のリピート放送
    2012年・映画・カラー 監督:阿武野勝彦/片本武志
    出演:ナレーション:宮本信子

ハマグリとシジミの漁が盛んな、三重県桑名市の長良川河口。この長良川の河口堰をめぐり、時代や政治に長い間翻弄されてきた漁師たちの歴史と今を描くドキュメンタリー。

死刑弁護人

「死刑弁護人」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月26日
    ※2月のリピート放送
    2012年・映画・カラー 監督:齊藤潤一
    出演:ナレーション:山本太郎

オウム真理教事件の麻原彰晃、和歌山毒カレー事件の林眞須美、名古屋女子大生誘拐事件の木村修治、光市母子殺害事件の元少年ら、死刑判決を受けた重大事件の被告人の弁護を引き受けてきた安田好弘弁護士を追ったドキュメンタリー。

平成ジレンマ

「平成ジレンマ」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月27日
    ※2月のリピート放送
    2011年・映画・カラー 監督:齊藤潤一
    出演:ナレーション:中村獅童

1980年代に訓練生の死亡や行方不明事件を起こし社会問題となった“戸塚ヨットスクール事件”と、今なお子どもたちと向き合い続ける戸塚宏校長の現在を追ったドキュメンタリー。

ふたりの死刑囚

「ふたりの死刑囚」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月28日
    ※2月のリピート放送
    2016年・映画・カラー 監督:鎌田麗香
    出演:ナレーション:仲代達矢

長年にわたり“名張毒ぶどう酒事件”を取材してきた東海テレビが、2015年10月4日に89歳で獄死した同事件の死刑囚・奥西勝と、2014年3月27日に48年ぶりに釈放された“袴田事件”の死刑囚・袴田巌という、冤罪を訴え続けたふたりの死刑囚に焦点を当て、彼らとその家族の人生を見つめるとともに、再審請求の困難さと、検察ばかりが有利な司法制度の問題点を明らかにしていくドキュメンタリー。

ヤクザと憲法

「ヤクザと憲法」(C)東海テレビ
  • 放送日:3月29日
    ※2月のリピート放送
    2016年・映画・カラー 監督:土方宏史

「暴力団対策法」から20年が経過した大阪。指定暴力団「二代目東組二代目清勇会」に密着取材し、現代のヤクザの世界の実態と知られざる彼らの素顔に迫っていく衝撃のドキュメンタリー。

齊藤潤一監督インタビュー

齊藤潤一監督三重と奈良の県境に位置する葛尾で凄惨な事件が起きたのは、昭和36年3月28日の夜だった。村の公民館で開かれた生活改善クラブの集会に参加した会員のうち、ぶどう酒を飲んだ女性会員17名が苦しみ始め、5名が死亡したのだ。名張市の名張警察署に第一報が届いたのは、午後8時50分になろうとしていた頃と記録されている。電話の主は葛尾の住民で、「村の宴会で婦人ばかりが倒れて死にそうだ」――という内容だった。これが世にいう〈名張毒ぶどう酒事件〉の始まりとなった。関係者による犯行と見た捜査本部によって重要参考人3名が浮かび上がった。事件から6日後、厳しい取り調べの末に自白したのが奥西勝だった。犯行動機は〈妻と愛人との三角関係の清算〉とされている。しかし、逮捕後の奥西は否認へと転じた。
 昭和39年、津地裁は証拠不十分で奥西に無罪を告げた。しかし、二審の名古屋高裁は昭和44年に逆転有罪の死刑判決を下し、昭和47年、最高裁は上告を棄却。奥西の死刑が確定した。収監後も奥西は獄中から再審を求めて請求を繰り返したが、昭和61年、5回目の再審請求によって名古屋高裁で本人質問が行われ、にわかに再審開始の光りが見え始めた。
 東海テレビが、『証言~調査報道・名張毒ぶどう酒事件』を放送したのはその最中の昭和62年だった。物証の検証、鑑定結果への疑問など冤罪の可能性を追求し、4半世紀を経て名張毒ぶどう酒事件に再び注目が集まり始めるが、昭和63年に高裁は再審請求を棄却し、灯りかけた光は再び闇につつまれた。
 それから20年近く経った平成17年、名古屋高裁は再審開始を決定した。東海テレビも再びこの事件へ目を向け、『重い扉~名張毒ぶどう酒事件の45年』(06)が作られたが、平成18年に再審開始決定は取り消された。しかし、その後も継続して東海テレビは『黒と白~自白・名張毒ぶどう酒事件の闇』(08)、『毒とひまわり~名張毒ぶどう酒事件の半世紀』(10)、『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(12)、『ふたりの死刑囚~再審、いまだ開かれず~』(15)と、ほぼ2年ごとに本事件を取りあげてきた。『眠る村』は、東海テレビによる名張毒ぶどう酒事件を描いた一連の作品の7作目にあたる。

『眠る村』は、『重い扉』からディレクターを務めてきた齊藤潤一監督と、『ふたりの死刑囚』で初めてドキュメンタリーを制作した鎌田麗香監督の共同監督作である。この共同作業について齊藤監督は、
「現場の取材は鎌田監督に託しました。鎌田から今日はこんな取材があったとか、こんな人に出会ったというような話を聞いて、じゃあ次はこんな取材をしたらいいんじゃないかとかディスカッションして次の取材に繋げていきました。編集作業は一緒にやって、鎌田と私で作り上げたという形です」と語る。
 平成27年、奥西勝死刑囚は八王子医療刑務所で89年の生涯を閉じた。「いつか塀の外でインタビューしたいと思っていましたので、非常にショックでした」と明かす齊藤監督は、再審請求の当事者が亡くなってしまい、作品を作る上でのモチベーションが下がったという。だが、奥西の妹、岡美代子さんによって再審請求が引き継がれたことで、認識を改めた。
「岡さんが一生懸命テレビカメラの前に立って兄の無罪を訴える姿を見てきたら、ここで自分たちも終わっちゃいけない。再審請求が続くかぎりは、作品を作り続けようと思いました」
 こうして制作された『眠る村』は、事件が起きた村をクローズアップしている。 「奥西さんが自白したことによって、村人の供述がどんどん変わっていったんです。どうして変わっていったのかを追求したのが1作目の『証言』でした。当時そう証言した人が、もしかしたら奥西さんが亡くなったので証言が変わった理由を話してくれるかもしれないという思いがあって、もう一度原点である村に入ってみようというのが今回の作品です」
 事件当時、30年前、そして現在。各時代の映像が豊富に残され、村人の証言を各時代で対比できるのは、事件発生当時から報道してきた地元局だからこそ可能な制作方法である。一方で、長い歳月が過ぎたことで関係者の多くが鬼籍に入っており、残り時間が限られていることも実感させる。
「あの事件に遭遇した人は、もうほとんど亡くなっています。もうあと5年、10年経つと、あの事件の目撃者はいなくなってしまう可能性が高いので、今この作品を作らないといけない。奥西さんの妹さんの後には、もう再審を引き継ぐ親族が居なくなってしまうという現実もありました」
 名張毒ぶどう酒事件が完全な終わりを迎える日はそう遠くない未来に迫ってきている。しかし、だからこそ「奥西さんが亡くなったことで、もうこの事件は終わったと思っている方もいっぱいいらっしゃるので、再審請求はまだ続いているということをしっかりと伝えていきたいと思っています」と齊藤監督は力強く語る。
 その一方で現実的な問題として、テレビ局という組織に勤務する以上、一人のディレクターが継続してこの事件を追い続けることは難しい。そのためにディレクターの世代交代も進めている。
「私の先輩から私に、そこから私の後輩へと、40年にわたって3人のディレクターがバトンタッチしてきました。私の場合は管理職になって現場に出ることが難しくなったので、信頼する後輩にこれを託そうという形でバトンを渡したんです。3人とも、この事件を調べれば調べるほど冤罪の可能性が高いと強く思いました。それは、カメラマンも編集マンもそうです。もっと言うとナレーションをお願いする俳優の方も、この事件は冤罪に違いないと思えないと、作品に関われないと思うんですよ」
 実際、本作でナレーションを担当した仲代達矢が『約束』で奥西勝役を演じたときには、自ら調べて冤罪に違いないないと納得した上で演じたという。
「仲代さんが、名張毒ぶどう酒事件のシリーズに関わっていただくのは、これで4作目になります。東海テレビが一生懸命取材しているのと同様に、仲代さんも、この事件の真相を究明したいという思いを持って頂いているものですから、今回のナレーションをお願いしたいと伝えたら、すんなりと了解をいただけました。きっちりと後世に伝えていかなければいけないと、思っていただいているのだと思います」
 音楽を担当した本多俊之も、再審請求の結果が出た日は裁判所へ足を運んだという。
「本多さんは、奥西さんが体調を崩して入った八王子医療刑務所にも来て――もちろん、会えるわけじゃないんですが――こういう所で療養生活を送っているんだと見た上で音楽を作ってくれました。本多さんも仲代さんと同じように、この事件を調べたからこそ、音楽が作れるっていうことなんでしょうね」
 昭和の中期に起きた名張毒ぶどう酒事件。間もなく平成が終わろうとする今、東海テレビでは、今後この事件をどのように描いていくことになるのだろうか。
「どんどん時代が流れてこの事件が風化してきています。平成も間もなく終わってしまいますけれども、5月以降も間違いなくこの作品は続いていきます。とにかくこの事件を忘れてほしくない。記憶にとどめるためにも、作品を作り続けたいと思っています」
 最後に、『眠る村』というタイトルには、どんな意味が込められているのかを尋ねた。
「奥西さんが自白してから村人の供述がどんどん変わっていって、その後も『どうしてなんですか?』って訊いても答えてくれない。もう、この事件を眠らせたいと思っているという意味で付けたんですが、この名張毒ぶどう酒事件に関しては、裁判所も眠っているんじゃないかと思っています。裁判所という村の中で、裁判官がこの事件にどういう決定をくだしてきたかを、この作品を通して知ってほしい。もっと言うと、私の所属する会社もある意味で村だと思いますし、社会にはいろんな村があると思うんです。勇気ある人は起き上がって違うと叫ぶ社会であって欲しいという意味も込められています」

【参考資料】
『名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の半世紀』(東海テレビ取材班 著/岩波書店)
『明治・大正・昭和 事件・犯罪大事典』(事件・犯罪研究会 編/東京法経学院出版)

取材・文/吉田伊知郎

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