松坂桃李&松岡茉優がさらなる飛躍を誓う!
パワフルな決意に沸いた第10回TAMA映画賞

集合写真

11月17日(土)から25日(日)まで東京・パルテノン多摩などで行われた映画ファンの祭典「第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM」内で17日、「第10回TAMA映画賞授賞式」が開催。授賞式には、松坂桃李、松岡茉優、山﨑努ら各受賞者が登壇し、トロフィーを手に喜びを語った。

TAMA映画賞は、TAMA映画フォーラム実行委員(市民ボランティア)が、「明日への元気を与えてくれる・夢を見せてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優」を表彰するもの。’17年10月から’18年9月に一般劇場で公開された作品及び監督・キャスト・スタッフが対象となる。

最優秀男優賞に輝いた松坂桃李は本年、『孤狼の血』『娼年』『不能犯』『彼女がその名を知らない鳥たち』といった作品群で難役に挑戦。「作品ごとにまったく異なる境遇に生きる若者の姿を、ほとばしる情熱で息衝かせた迫真の演技を見せたこと」が受賞理由となり、その振り幅のある演技が評価された。松坂は、10年に及ぶ役者業を回顧し「初めてドラマが決まった時は、チーフマネージャーさんに『松坂くんはバーターだから』と言われた」とぶっちゃけただけでなく、「バーターというのは、事務所の売れている方の力を使って出させていただくこと」としっかりと説明し、会場も大爆笑。

「今年は結果を出さないと」とプレッシャーをかけられ続けたそうで、「二人三脚でやっているチーフマネージャーさんに、精神的に食らう言葉をかけ続けられた。おかげ様でメンタルが強くなりました。ボロ雑巾のようにやられる」と厳しく鍛えられる年月だったそう。しかしながら「こうやって作品に出会わせてくれたのもチーフ。感謝してもしきれない。その現場先でいろいろな方に支えていただき、こうして自分が出来上がっている。30代以降は、受けた恩を返し切れるかわからないですが、丁寧に作品に向き合って返していきたい」と感謝を述べ、さらなる飛躍を誓った。

松坂桃李最優秀男優賞受賞 松坂桃李

最優秀女優賞の松岡茉優は、映画初主演を務めた『勝手にふるえてろ』において「稀にみるこじらせ型のヒロインに血を通わせた」と称えられての受賞。映画賞の華となる最優秀女優賞を受けたにも関わらず、「うれしくてたまらないのですが、もし最優秀賞が1名だったら、私は確実にここにはおりません。完全な2位」と苦笑いを見せた松岡。というのも、今年は『万引き家族』の安藤サクラも同賞を受賞しており、「初号試写で(『万引き家族』を)観た時に、リリー・フランキーさんが『ラストシーンの演技だけで、安藤サクラは賞を8個は獲れる』と言っていた。私は“悔しい”と思いました」と安藤に敗北宣言。

「でも悔しいと思えたのが、一番の成長。いつかサクラさんに追いつきたい、追い越したいと思えたのは、2年前にTAMA映画賞で新進女優賞をいただき、俳優として認めてもらえたから。認めてもらえたんだという自信と温かな気持ち、たくさんの人が映画を観てくれたという心強い後押しで、飛躍していくことを誓います」とチャレンジ精神を見せつけ、会場から大きな拍手を浴びていた。

松岡茉優最優秀女優賞受賞 松岡茉優

また、新進男優賞・女優賞を受賞したフレッシュな面々もステージに登場。深川麻衣は「『パンとバスと2度目のハツコイ』は、自分に足りないものや、映画の楽しさをたくさん教えてもらった大切な作品」、伊藤沙莉は「9歳からこのお仕事をさせていただいている。いまに至るまでの15年間は決して楽しいだけではなく、悔しいことも、傷つくこともたくさんあった」と感涙、吉沢亮は「こういった賞をいただくのは初めて。映画の現場が大好き。もっともっと、映画をやりたい」、吉村界人は「カメラの前で芝居ができないとビビってしまうときもある。そういう自分に負けちゃいけない」とまっすぐな瞳で、それぞれの未来を見つめていた。

深川麻衣最優秀新進女優賞 深川麻衣
伊藤沙莉最優秀新進女優賞 伊藤沙莉
吉沢亮最優秀新進男優賞 吉沢亮
吉村界人最優秀新進男優賞 吉村界人

『モリのいる場所』で特別賞を受賞した山﨑努の出席も、会場を大いに沸かせた。「こういう立派な賞をいただいて、うれしく思っています。特に、特別賞はうれしい」と切り出しつつ、「ここに樹木希林がいればもっとよかった。残念です。仕方ありません」と9月に亡くなった樹木を思い出して、ポツリ。「現場ではものすごく元気で、僕が熱中症寸前でダウンしそうになって、彼女に助けてもらいました。一番元気だったのが、希林さんだった」と懐かしみ、同作に出演した吉村界人は「樹木さんとも、山﨑さんともお話をさせていただいた」とベテラン俳優からたくさんのものを受け取った様子だった。

山﨑努特別賞受賞『モリのいる場所』より山﨑努

<第10回TAMA映画賞受賞結果一覧>

  • ■最優秀作品賞:『万引き家族』(是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同)、『寝ても覚めても』(濱口竜介監督、及びスタッフ・キャスト一同)
  • ■特別賞:『モリのいる場所』(沖田修一監督及び山﨑努・樹木希林はじめスタッフ・キャスト一同)、『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督、及びスタッフ・キャスト一同)
  • ■最優秀男優賞:東出昌大(『寝ても覚めても』『菊とギロチン』『パンク侍、斬られて候』『OVER DRIVE』『予兆 散歩する侵略者 劇場版』)、松坂桃李(『孤狼の血』『娼年』『不能犯』『彼女がその名を知らない鳥たち』)
  • ■最優秀女優賞:安藤サクラ(『万引き家族』『DESTINY 鎌倉ものがたり』)、松岡茉優(『勝手にふるえてろ』『万引き家族』『ちはやふる -結び-』『blank13』)
  • ■最優秀新進監督賞:今泉力哉監督(『パンとバスと2度目のハツコイ』)、三宅唱監督(『きみの鳥はうたえる』)
  • ■最優秀新進男優賞:吉村界人(『モリのいる場所』『悪魔』『サラバ静寂』『ビジランテ』)、吉沢亮(『リバーズ・エッジ』『猫は抱くもの』『銀魂2 掟は破るためにこそある』『ママレード・ボーイ』『悪と仮面のルール』『レオン』『斉木楠雄のΨ難』)
  • ■最優秀新進女優賞:深川麻衣(『パンとバスと2度目のハツコイ』)、伊藤沙莉(『榎田貿易堂』『パンとバスの2度目のハツコイ』『寝ても覚めても』『blank13』)


第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM公式ページ
https://www.tamaeiga.org/2018/

文:成田おり枝