戦争に巻き込まれ、全てを失った男が犯した殺人を主軸に、戦争の悲惨さ、虚しさを描いた社会派ドラマ。小林桂樹、吉行和子、笠智衆ら演技派俳優が出演。芸術祭優秀賞を受賞した。画板所を細々と営む山尾（小林）は召集令状を受け取り、訓練所で古参兵の安川（荒井）から徹底的にいびり抜かれる。広島に疎開した家族は全滅し、復員した山尾は闇商売で景気のいい安川と再会するが…。

官僚の汚職事件にメスを入れた松本清張原作の社会派サスペンスで、プラハ国際テレビ祭金賞を受賞した。産業省の課長補佐・倉橋（内藤）は局長の指示である業務を行なうが、それが原因で汚職問題の重要参考人として警視庁に呼び出される。やがて倉橋は謎の死を遂げ、同じ官舎に住む山田（川崎）が事件の真相を探るが…。

松本清張原作「黒い画集」収録の短編「寒流」を、中島丈博のシナリオでドラマ化。実直な銀行員が自分を裏切った愛人と上司を破滅させるため完全犯罪を計画し、妄執の虜になる。東陽銀行の都内の支店長に新任した沖野（平）は、融資を頼みに来た料亭の女将・奈美（香山）と関係を持つ。しかし学生時代からの友人であり上役の桑山（中谷）に奈美を奪われ、自分は地方の支店に転勤させられる。失意の沖野は桑山への復讐を決意する。

重役夫人の素行を調査するため、興信所の調査員が仕組んだ事故がきっかけで巻き起こる殺人劇。原作は松本清張の「黒い画集」シリーズの1つとなる同名短編で、作者自身が遊園地の清掃人役でカメオ出演している。山梨県内の断崖の下で、若い男の死体が発見された。翌日、同県の湖畔の竹藪の中から女の絞殺死体が出てきた。この二つの殺人と東京で起こったトラックの軽い接触事故が、ひとつの事件として繋がってゆく…。

大手電機会社に勤める秋場文作（古谷一行）は、ある日偶然にも10年前付き合っていた恋人・野関利江（池上季実子）と再会した。歳月は２人を変え、婿養子に入った秋場は妻子持ちの課長職、利江はなんと秋場の会社会長の愛妾。だが、秋場への思いを抱き続けていた利江は秘密裏に接近。秋場も平凡な生活にあきあきしていたことから、２人の愛は再燃した。やがて、秋場は利江の会長への働きかけで部長に昇進するが、執拗に付きまとい始めた利江に殺意を抱いて―。

農林省に勤務する新田順三（古谷一行）は、妻の父が官庁次官という恵まれた環境もあり、順風満帆な出世街道を歩んでいる。その新田が、ひょんなことから知り合ったＯＬ・平井良子（吉川十和子）と関係を持ち、ズルズルと深みにはまった。だが、新田は、良子に恐喝傷害罪で刑務所に入っている夫がおり、１週間後に出所する、と告白され愕然。自分の将来を考え、良子を山中に誘い込んで絞殺―。

胃の手術をし、飛騨川沿いの温泉旅館で療養していた教師の太田二郎（古谷一行）が、妙な事件に巻き込まれた。旅館の１人息子が一昨年、謎の失踪、その婚約者・内海元子（姿晴香）が従業員として働きながら捜索を行っていたのだ。旅館内に渦まく不思議な人間関係。まもなく、元子に下の世話までさせている長期逗留中の老作家が姿を消し、その浴衣、おむつなどが近くの湖で発見された―。