「多十郎殉愛記」などの時代劇、「日本の首領（ドン）」シリーズ等のヤクザ映画など、数多くの作品を手がけた映画監督の中島貞夫さんが6月11日に亡くなられました。88歳でした。

1934年、千葉県東金市出身。東京大学文学部卒業後、1959年に東映入社。
京都撮影所に配属となり、マキノ雅弘、今井正監督らに師事し助監督として経験を積んだ後、64年、映画「くノ一忍法」で監督デビュー。
66年、松方弘樹主演「893愚連隊」で日本映画監督協会新人賞を受賞しました。

以後は東映京都のエースとして、菅原文太主演「まむしの兄弟」シリーズ（71年～）、松方弘樹主演「脱獄広島殺人囚」（74年）、
「沖縄やくざ戦争」（76年）、「日本の首領（ドン）」シリーズ（77年～）などの実録ヤクザ映画路線を深作欣二監督と築くとともに、
菅原文太主演「木枯し紋次郎」（72年）、松方弘樹主演「真田幸村の謀略」（79年）などの時代劇映画、宮尾登美子原作「序の舞」（84年）などの文芸作品など、多彩な映画でその手腕を発揮。
「大奥」（68～69年）や「服部半蔵 影の軍団」（80年）、TBS大型時代劇スペシャル「織田信長」「坂本龍馬」「武田信玄」などテレビドラマの演出や脚本家としても多数の作品に携わりました。

1987年から大阪芸術大学映像学科教授や学科長を務め、2011年からは立命館大学映像学部客員教授を務めるなど、若手の育成にも尽力。
京都映画祭（97～2012年）では総合プロデューサー、2014年に始まった京都国際映画祭では名誉実行委員長を務めました。

2014年には京都・太秦を舞台に"斬られ役"の人間ドラマを描いた映画「太秦ライムライト」に、映画監督役で出演。
ドキュメンタリー「時代劇は死なず ちゃんばら美学考」（2015年）の構成・監督を務めるなど、晩年まで時代劇人気の復活にかける熱意を燃やしました。
姉妹チャンネルの時代劇専門チャンネルも製作参加した2019年公開の「多十郎殉愛記」が、映画監督としての最後の作品となりました。

2006年に牧野省三賞、20年に日本アカデミー賞会長功労賞、23年に毎日映画コンクール特別賞を受賞。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。